2018年、PS VRで発売された『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』をプレイしたときの衝撃は今でも鮮明に覚えています。VRならではの新しい感覚と、よく練られた3Dアクションが見事に融合し、これまでにない刺激を与えてくれる体験でした。部屋は決して暑くなかったのに、興奮しすぎて膝の裏に汗をかいてしまったほどです。
あれから6年が経ち、ついにPlayStation 5向けに『アストロボット』が登場しました。VRでの体験を期待していたものの、今回はVRに対応しておらず、通常の画面でプレイするひとり用の3Dアクションゲームとなっています。それでも、開発を手掛けたTeam ASOBIは変わらず、今回も非常に高品質で遊び心あふれる作品に仕上がっていました。
宇宙を旅するアストロの新たな冒険
物語の主人公はおなじみのロボット「アストロ」。彼は仲間のボットたちとともにPS5の母船で宇宙を旅していたところ、突如宇宙人に襲われ、仲間や船のパーツが四散してしまいます。アストロは散り散りになったものを取り戻すため、様々な惑星を巡る冒険に出発します。
ジャンルとしてはオーソドックスな3Dアクションですが、その優しさがシリーズの特徴です。例えば、アストロはジャンプ中にレーザーを放ちつつ空中にとどまることができるので、着地を見極めやすい上に、レーザー自体が攻撃手段としても機能します。また、物を投げる際はオートエイムが効いており、敵に倒されても少し戻されるだけでゲームオーバーにはならない親切設計です。
豊富なアクセシビリティと遊びやすさ
本作はアクセシビリティ面でも非常に充実しています。カメラ操作を補助する機能や、モーションセンサーの代わりにスティックを使うオプション、さらには視覚的な補助機能も備えられており、あらゆるプレイヤーが快適に遊べるよう工夫されています。このため、プラットフォームアクションとしては難易度が低めですが、仕掛けやギミックの豊富さでその物足りなさを補っています。
「DualSense ワイヤレスコントローラー」を模した「デュアルスピーダー」で空を飛んだり、葉っぱを蹴散らしてみたり、さらには巨大ロボットを助ける場面も登場します。こうした特殊アクションも多彩で、犬と突撃する「ブルドッグブースター」やカエルパンチを繰り出す「ツインフロッググローブ」など、どれも非常に爽快です。
筆者が特に気に入ったのは、アストロが小さなネズミに変身するアクションです。狭い場所に入り込むだけでなく、サイズを自由に変えることで発動する仕掛けも用意されています。小さな視点から見る世界が異なり、同じ場所でも飽きることなく楽しめる点が秀逸です。
DualSense コントローラーの魅力を最大限に活かす
『アストロボット』は、PS5の「DualSense ワイヤレスコントローラー」の特性を最大限に活かしています。触覚フィードバックによる振動で、草や雪の上を歩く感触がリアルに伝わり、「カラースプレーを殴る音」を感じ取れるほどの細かな演出が施されています。さらに、微妙な振動で隠されたボタンを発見する謎解き要素もあり、アクションゲームの新たな感覚を提供しています。
アダプティブトリガーも効果的に使われており、攻撃の際の手応えが重みを伴い、プレイヤーに大きな満足感を与えてくれます。こうしたDualSenseの特性を活かした設計は、PS5のプリインストールタイトル『ASTRO’s PLAYROOM』からさらに進化しており、より洗練された体験を提供しています。
PlayStationキャラクターも登場する特別なステージ
本作の大きな魅力の一つとして、PlayStationの歴代キャラクターが登場する点があります。クレイトスやラチェットといった有名キャラクターが顔を見せるだけでなく、それぞれに関連する特殊なステージも用意されています。ただ話題性だけでなく、キャラクターに合わせたゲームシステムが用意されている点が嬉しい驚きです。
ただし、ボス戦は単調に感じる場面も
全体として素晴らしい仕上がりであるものの、ボス戦についてはやや単調に感じられる部分があります。ビジュアルや攻撃方法はしっかりと作り込まれているものの、基本的には敵の攻撃を避け、一定回数攻撃を当てるだけのシンプルなパターンが多く、もう少し工夫が欲しかったところです。ただし、この点は他のアクションゲームでもよく見られる問題であり、本作に限った欠点ではないと言えるでしょう。
美しいビジュアルと豊かなインタラクション
『アストロボット』のビジュアルは非常に美しく、葉っぱや宝石がキラキラと動く様子や、多彩なオブジェクトが動くさまは目を引きます。また、ステージ中にいるボットたちを助けると、愛嬌を振りまいてくれるなど、細かな演出がプレイヤーを楽しませてくれます。こうした遊び心にあふれる設計が、本作の魅力を一層引き立てています。
音楽や効果音も抜かりなく、ステージ演出にぴったりと合致しています。氷を歩く音やギアがきしむ音など、リアルな効果音が没入感を高めており、チェーンソーで物を切る場面などでは、音と振動が相まって非常に印象的な体験となりました。
まとめ:期待通りのクオリティ、しかし初代を超える衝撃はない
『アストロボット』は、期待通りの素晴らしい作品です。PS5を最大限に活かしたデザインや、多彩なアクション、豊富なギミックに満ちたステージは、プレイヤーに楽しい時間を提供してくれます。ただし、2018年の『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』で感じたような圧倒的な衝撃は、残念ながら今回味わえませんでした。これは、すでに『ASTRO’s PLAYROOM』を挟んだことで、新鮮さが若干薄れたためかもしれません。
それでも、『アストロボット』はPS5を持っているならぜひ手に取るべきタイトルです。その完成度と遊び心で、必ずや満足感を提供してくれるでしょう。
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